成田国際空港へのアクセス特急「成田エクスプレス」の専用車両として1991年(平成3年)3月19日に運用を開始。
1990年(平成2年)から2002年(平成14年)にかけて、東急車輛製造および近畿車輛で、5次にわたって111両が製造された。
1992年鉄道友の会ローレル賞受賞、第4回ブルネル賞で近距離列車部門最優秀賞を受賞した。
車両のデザイン開発はGKインダストリアルデザインが担当した。
車体の塗装は、それぞれ「北極圏の白」、「成層圏の灰色の空」、「地平線に輝く赤い太陽」、「果て無き黒い宇宙」をイメージしている。
また、側面および前面貫通扉部分に航空機をあしらったマークと「N'EX」のロゴが配されている。
窓ガラスについてはフランスに本社があるサンゴバン社の製品を使用している。
2009年4月時点で6両編成と3両編成が存在し、259系の投入前は3連+3連、3連+3連+3連、3連+3連+6連という編成で運行されていたが、E259系の投入後は6両編成のみの運用となり、6連単独または6連+6連の形で運行された。
車体
車体は、床と屋根にステンレス鋼板を使用した他は普通鋼製である。
パンタグラフはPS26形をモハ253形の前位に1基搭載し、取付け部を低屋根構造とすることで折りたたみ高さを3,980mmに抑え、狭小建築限界トンネルの介在する中央本線への乗り入れも可能である。
号車番号は運用上固定されないため、幕式行先表示器の横にマグサイン式の号車番号表示器が装備されている。
先頭車(クロ253形・クモハ252形)については、品川駅 - 錦糸町駅間の地下線(東京トンネル)に乗り入れることから前面貫通構造とされ、複数編成を連結した時に編成間の貫通路が確保できるように貫通幌も接続される。ここは通常乗務員専用の通路となっており、一般旅客がここを通り抜けることはできない。
東京駅で新宿駅方面の列車と横浜駅方面の列車の連結・解放を迅速に行うために自動解結装置に加えて自動幌装置(幌の分離・接続を自動で行う装置)を装備している。
また、スカートにはジャンパ栓の切欠きが片方にあり、落成当初は切欠きにカバーを装着していたが、現在は全て取り外されている。
走行装置は251系を基本とした界磁添加励磁制御で、主電動機は205系以降の標準品であるMT61(120kW/375V)を使用し、弱め界磁率を30%まで使用することによって高速性能を高めている。歯車比は1:4.82である。
台車はボルスタレス式のDT56B/TR241で、ヨーダンパ(蛇行動防止ダンパ)、軸バネダンパの採用により、乗り心地の改善を図っている。
ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用し、軸単位の滑走再粘着制御を行うことで最高運転速度130km/hを実現している。
その他に直通予備ブレーキ、抑速回生ブレーキ、耐雪ブレーキを装備する。
編成・車種構成
【0番台・200番台】(1次車 - 5次車)
1990年の製造当初は全編成(21本)が3両編成(Tsc-M-M'c)であったが、うち12本は1992年(平成4年)から1996年(平成8年)にかけて中間車(M1-M'-T)を組み込み6両編成となった。2002年の増備車(5次車・200番台)は当初から6両編成である。
3両編成で残ったものは、リニューアルと同時に全室グリーン車の開放室を普通車に改めた。
【番台区分】
1次車(0番台)
1990年(平成2年)にクロ253形 (Tsc) - モハ253形 (M) - クモハ252形 (M'c) の3両編成を基本とし、クロ253形は0番台を組込んだ編成が11本(Ne01 - 11編成)、100番台を組込んだ編成が10本(Ne101 - 110編成)の計21本63両が製造され、大船電車区(現・鎌倉車両センター)に配置された。
グリーン車(クロ253形)は、前部のコンパートメント(個室・定員4人)と後部に開放式グリーン室(定員20人)の2室に区分されている。開放式グリーン室については、1人掛け座席を2列に設置した0番台と、2人掛け座席と1人掛け座席を千鳥に設置した100番台の2種が用意された。0番台の座席は外側に30度向けて固定することができ、座席間隔は1,090mm(100番台は1,340mm)である。
普通車の座席については、フランス製の片持ち式の2人掛けの非リクライニング座席を向かい合わせに固定したボックス式クロスシート(座席間隔2,040mm)とされた。これは、携行荷物の多い空港利用客に配慮して座席の下や背の間の部分に荷物が置ける空間を確保するためである。客席内の荷物棚は旅客機と同様にふたを設けた形態(ハットラック式)になっている。
また、乗客が携帯する大型荷物(スーツケースなど)を置くことが可能な荷物置き場が各車の車端部に設置されている。モハ253形の成田空港方デッキにはJRインフォライン(JR東日本の英語〈後に韓国語・中国語も追加〉による電話案内)専用電話がある。
開放客室は全席禁煙としたため、デッキに灰皿を設けて喫煙コーナーとした。
その後、デッキ・個室も禁煙とされた。
2 - 4次車(0番台増備車)
「成田エクスプレス」の好評を受けて、基本編成を6両に増強するための増備車で、モハ253形100番台 (M1) - モハ252形 (M') - サハ253形 (T) の中間車3両が、1992年(平成4年)に6本、1994年(平成6年)に4本、1996年(平成8年)に2本の計12本(36両)が製造され、NE01 - 11編成およびNE101編成に組み込まれた。
客室内装は、座席については1次車の普通席と同様に新製時はボックス式クロスシートとされたが、座面の色が赤と黒のツートンから黒1色となった。カーペットの素材はカットパイルからループパイルに、色調はダークグレイに変更され、荷物棚の塗料も艶消しから半艶に変更された。また、モハ253形100番台の電話は一般の車内公衆電話となった。さらに、屋根材が1次車のステンレス鋼板から耐候性鋼板に変更され、ビードプレス仕上げがなくなってフラットな表面とされたり、新鮮外気取入口を空調装置本体から車体側面肩部に移すなど、外観にも若干の変化が見られる。
これらの増備により、「成田エクスプレス」は3両編成と6両編成の組合せで最大12両編成で運転されるようになった。
5次車(200番台)
2002年、FIFAワールドカップ開催に伴う輸送力増強のために新製された車両で、6両編成2本(計12両。Ne201,202編成)が東急車輛製造で製造された。このグループは、台車や車内設備の変更により200番台(M1車は300番台)に区分されている。
この頃には、電車の制御システムとしてVVVFインバータ制御が既に一般化していたが、従来車と共通に運用する関係上、制御方式は界磁添加励磁制御が踏襲された。これには、中央・総武緩行線で運用していた205系をVVVFインバータ制御に改造し武蔵野線に転用する際、捻出された主電動機、主制御器、励磁装置、断流器、誘導分流器を再用した。台車は軸梁式のDT69/TR254に、行先表示器は従来の幕式からLED式に変更されている。
内装関係は抜本的に見直しが行われた。全般的にはバリアフリーに配慮して座席への手掛けの設置やドアチャイムの設置、出入り台にはプロテクターを兼ねた手すりを増設している。
グリーン車は、コンパートメントは存置されたものの、開放室については座席間隔は1,090mmのままとして座席を2+1人掛け(両端は1+1人掛け)に変更し、開放室の定員は28人となった。荷物棚についても乗客の使い勝手やメンテナンス性を考慮して開放型とし、それに伴って蛍光灯カバーの形状を変更した。普通車については、従来の固定式クロスシートから2人掛けの回転リクライニングシートに変更した。このため、座席付近の荷物の収容空間は少なくなった。荷物棚、蛍光灯カバー形状の変更についてはグリーン車と同様である。洗面所は、設置方向を使い勝手に配慮してグリーン車同様の長手方向に変更し、カーテンを追加した。
1000番台
2010年11月、JR東日本大宮支社は東武日光線・東武鬼怒川線直通特急「日光」・「きぬがわ」で運用されている485系および189系の置き換え用として、5次車200番台の内外装リニューアルおよび制御方式をVVVFインバータに変更した1000番台6両編成(MT比4M2T)2本を投入し、2011年4月16日から運行を開始する予定であると発表した。1000番台は2010年12月23日に、改造を終えた編成が東急車輛を出場しており、設計最高速度は130km/h(営業最高速度は120km/h)、編成は普通車のみで構成され定員は290名である。
【成田エクスプレスからの撤退と廃車】
JR東日本では2009年10月1日以降、「成田エクスプレス」用の新型車両であるE259系を順次投入し、同日時点で3両編成は運用を離脱、全列車が6両または12両編成での運行となった。その後、「成田エクスプレス」は2010年6月30日をもって253系での運行を終了しており、翌7月1日から全列車がE259系での運行となっている。
2009年9月30日限りで運用を離脱した3両編成のうち6本は長野総合車両センターに配給輸送され、うち3本9両は廃車とされた。この時点では183系・189系の波動用車両やその他の特急形車両の置き換え計画もないことから、5次車の200番台を除き廃車の可能性を示唆しており、その後2010年9月までに0番台編成は全車除籍された。
また、5次車の200番台についてはNe-201編成が大宮総合車両センターへ、Ne-202編成は東急車輛製造横浜製作所へそれぞれ入場している。そして2010年9月末までに、後述する長野電鉄譲渡車両を除いた0番台全編成の長野総合車両センターへの配給輸送および自力回送が完了し廃車となった。なお自力回送は6両編成のみ実施されている。
【長野電鉄への譲渡】
2010年6月、長野電鉄は253系3両編成2本(6両)を譲り受けたことを公表した。同社ではワンマン運転対応等の各種改造・整備を行った上、長野線の特急車両として2011年より使用している。同社と山ノ内町は新型特急車両の愛称を2010年10月1日から1か月間募集し、同年11月19日、その愛称が「スノーモンキー」に決まったと発表した。
長野電鉄に譲渡予定の3両編成2本(Ne-107、Ne-108)は、2010年7月に東急車輛製造横浜製作所へ甲種輸送された。同年12月23日に東武線直通特急用の1000番台6両とともに東急車輛を出場し、長野電鉄屋代線の屋代駅まで甲種輸送された。
長野電鉄における向けの車両の形式称号は2100系に決定し、2011年2月26日より運行を開始した。2100系は1000系「ゆけむり」とともにA・B両特急に充当されている。
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